2016年7月10日日曜日

 速報 死刑廃止世界大会の袴田ひで子さん
CPRニュースレター87号(2016年7月10日発行)掲載予定)
NPO法人監獄人権センター(CPR)事務局長  田鎖麻衣子

6月21日から23日まで、オスロ(ノルウェー)において開催された死刑廃止世界大会に、袴田巌さんの姉・袴田ひで子さんがゲストとして招かれた。この大会は、フランスを本拠地とする国際的な死刑廃止団体ECPM(“共に死刑に反対を”の意)が、世界死刑廃止連盟(WCADP)と共に3年に一度開催するもので、第6回となる今回は、ノルウェー、フランス、オーストラリア各政府の後援のほか、EU、ルクセンブルク、スペイン、トルコ、ベルギー、モナコ、イタリア、フランコフォニー国際協会、パリ弁護士会などによる援助を受け、世界90か国以上から参加者を得て行われたものである。監獄人権センターはWCADPの構成団体であり、筆者は第1回のストラスブール大会から欠かさず参加してきたが、今回は、83歳にして初の海外渡航となるひで子さんの付き添い役という任務を帯びての出席となった。
開会式[1]に先立つ公式記者会見に、ノルウェーのブルゲ・ブレンデ外務大臣、フランスのジャン=マルク・エロー外務・国際開発大臣(元首相)らと共に臨んだひで子さん。最近の巌さんの様子について「48年も監獄の中にいたらまともではいられない。巌は、巌の世界を作り上げて別人間のよう。今は家に帰り、肉体的には健康だが、精神的にはまだ監獄の中にいたときのまま」と述べた。また、翌22日の夜にオスロ大学で開かれた特別イベントには、2015年のノーベル平和賞を受賞したチュニジア国民対話カルテットのメンバーや、アメリカ、アイルランド[2]、ウガンダ[3]、マラウィ[4]の元冤罪死刑囚らと共に登壇。ひで子さんは、事件直後から現在にいたる雪冤の闘いを振り返り、「事件発生から50年になりますが、巖にとっても私にとっても取り戻すことのできない半世紀です。巖は固く心を閉ざしながらも、必死で生きるための闘いをしていると思いますし、その心の中は張り裂けんばかりの無実の叫びであふれかえっていることと思います。Thank you for your attention(ご清聴ありがとうございました)」とスピーチを締めくくった。会場は総立ちとなり拍手を送った。
袴田さんの事件には、アムネスティ・インターナショナルをはじめとする世界の人権団体・個人が救援活動に取り組んできた。そのため、世界の死刑廃止コミュニティにおけるひで子さんの知名度は非常に高く、様々な人から声をかけられたのだが、誰もが、背筋をまっすぐに伸ばし確かな足取りで歩きまわり、はきはきと話すひで子さんに、「60代くらいにしか見えない」と驚愕。巌さんの無罪が確定したらぜひお揃いで私の国に来てください、という誘いも少なからず受けた。東京高裁での即時抗告審は既に3年目を迎えているが、1日も早く再審が開始され、巌さんの冤の雪がれることを願う。 



[1] 開会式には、死刑存置国も含め世界10数か国の閣僚が出席したほか、ロベール・バダンテール氏(フランスが死刑を廃止した際の法務大臣。現在はECPMの名誉総裁。ひで子さんが対面した中で唯一、ひで子さんより年上=88歳=の人物)、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官(ヨルダン王子)らがスピーチ。フランシスコ・ローマ教皇からのビデオメッセージも流され、広く世界に報道された。
[2] アイルランドがすべての犯罪について死刑を廃止したのは1990年だが、大会に参加したピーター・プリングル氏は1980年に死刑判決を受けた。
[3] ウガンダでの最後の死刑執行は2005年であり、事実上の死刑廃止国と位置付けられている。https://www.deathpenaltyworldwide.org/country-search-post.cfm?country=Uganda
[4] マラウィでの最後の死刑執行は1992年であり、事実上の死刑廃止国と位置付けられている。https://www.deathpenaltyworldwide.org/country-search-post.cfm?country=Malawi

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